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ご近所めぐり(1)いつもの場所で俳句

私が俳句をつくるときの「ご近所」とは、小田急線沿線をさします。

更におおざっぱに言うと、
田園都市線沿線は「隣町」の感覚ですが、中央線や京王線の沿線は「あまり知らない町」、
そして東横線沿線は「見知らぬ町」となります。

そのアバウトさで「ご近所めぐり」をいたします。

そうそう、何年か前に寄稿した記事を思い出したのでした。

タイトルは「三つの定点観測地点」。、「俳句文学館」2008年2月号からの転載です。
3つのうち2つが「ご近所」にあたります。

   ・・・ * ・・・ * ・・・ * ・・・ * ・・・

 「草庭」とか「草の庭」と呼びならわしている小庭園がある。
自分の庭でもないのに図々しいことだが、毎月通うようになって、かれこれ二年ほどになる。
それ以前にも訪れているから、通算するとかなりの回数にのぼる。
初めて訪れたのは、まだ学生のときだった、と思う。
最近では一年間有効のパスを作ってスルッと入口を抜けている。
パスには写真が貼ってあるので、車の免許証同様、自分の顔の歴史にもなってしまいそうである。

この庭園は東京都墨田区の向島百花園。
藍生の黒田杏子主宰は、会社にお勤めの頃から、
庭園内の座敷を借り切って「仕事をしたり、昼寝をしたり」していらしたそうだ。
我々藍生の会員が「藍生のメッカ」と囁きあう由縁である。

続けて通い、俳句を作ることを通して、見えてきたものがある。
年々歳々花も同じからず、ということである。
同じ句は二度とできない。
それは、対している自分も同じではないからだとも思うが。 

 向島百花園は有り難く賜った定点であるが、そのほかに二つ、この数年の間に得た定点がある。

 初めからそのつもりで通い始めたわけではない。

 九年間の大阪暮らしを終えて、再び関東圏に戻ったのは、九九年の三月末だった。
幼稚園と小学校の転入手続きや、引越しの荷解きを済ませ、
五月に同世代同地域在住の主婦四名で、新しい句会をキックオフした。
子どもたちが学校等から戻るまでに帰宅したい、
縁あって棲みついたこの地域をもっと知りたい、等の理由から、
沿線のスポットをいくつか選び、吟行を重ねた。

 そうこうするうちに、次月の新たな吟行地候補が挙がらないときに、必ず登場するスポットが出てきた。
それが川崎市多摩区の生田緑地である。

 この緑地には、日本民家園やプラネタリウム、岡本太郎美術館等の有料の施設のほか、
菖蒲園、梅林、また、かつて誰それの櫓があったという史跡もある。
近く藤子不二雄の記念館もできるそうな(注:2011年9月藤子・F・不二雄ミュージアム開館)。
とにかく広く、焦点が絞りにくいが、何でもある所だ。
鶺鴒を乗せたまま、つっと岸を離れた氷が、ゆっくり回る様を見届けたりして、
楽しい思いを重ねさせて貰っている。

 また、この句会は今ではメンバーが十名ほどになっているが、
そのおひとりの紹介で通うようになったのが、座間市の谷戸山公園である。
ここは、里山をすっぽり公園にしたような場所で、生田より人の匂いが濃い。
水鳥の渡ってくる池もあり、
早春、ここで鶯の声を聞くと、肩からすうーっと力が抜け、しみじみ安らいだ気分になる。
生田同様、広くて何でもありだが、
泉から湧き出た水が、ちっちと水ぐるまを回すのを聞きながら、お弁当を開くのが私のお気に入りである。

 この句会では生田と谷戸山を一年交替で定点観測する、そう割り切ったのは実は一昨年末である。
去年は谷戸山へ通った。今年は生田の番である。
一年間お預けにするのもひとつのポイントかもしれない。

そこへ行けば俳句モードがONになる。そんな場所が三つもできてとても幸せである。

   ・・・ * ・・・ * ・・・ * ・・・ * ・・・

もう4年も前に書いたものですが、相も変わらず同じことを続けています。

今年は生田緑地の年。
プラネタリウムが新しくなって、もうすぐオープンします。
一連の改修工事で、なじんだ噴水は無くなりましたが、民家園も梅林も健在です。

                                              (髙田正子)

by shinyurikara | 2012-04-07 16:36 | ご近所めぐり  

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