故きを温ね(13)湯島天神

11月15日(木)、まさに七五三当日の行き先は湯島天神でした。

前日、夫が次女に、もじもじしながら手渡したのが天神さまの合格守。
  あらあ、湯島? 明日行くよ、私も。
  え、そうなの?

仕事の帰りにわざわざお詣りしたお父さんと、吟行のついでを考えていたお母さんを持つ娘は、高校三年生です。
受験生ですが、風向きが滅法あやしく、起きられない、食べられない、もちろん勉強なんてできるわけな~いという日々が続いていました。

10月の終わりにひと月越しで検査の最終結果が出て、身体的にはまずは不問となりました。
ほっとしましたが、あとは手伝えない領域。母としては肚をくくって待つほかありません。

そんなわけで、うかうか歩きを続けております。

このところ坂巡りの様相すらありますが、湯島天神にも、男坂、女坂がありました。

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                        ▲男坂    ▼女坂
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裏手には夫婦坂も。
あえて日溜まりに設けた坂なのでしょうか。境内でいちばん暖かかったのがこの傍らです。

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境内では菊花展が開催中。
カメラを持った人、手帳を持った人、さまざまに賑わっていました。
日の当たるところには、見事に仕立てられた鉢がずらりと。

  千本の日向の菊となりにけり    正子

でもずっと歩いていると、

  首ひとつづつにも見えて菊花展  正子

という気分になってくる私は、臍曲がりなのでしょうか。

七五三当日の割に、それらしき人出が少なかったのは、平日だからでしょう。
それにしても、パパママは当然のこととして、付き添いのおじいちゃまおばあちゃまが若く見えます。
うーむ。ま、理由は考えるまでもありませんけど……。

  父母とその父母と七五三       正子
  赤いべべ着てお転婆よ七五三

そしてさすがに受験期の天神さま。
出花の番茶や煎茶が、マフラーの色や柄もとりどりに、笑いさざめいておりました。

  また混んで小春のお札売場かな  正子

お母さんが「ついで」に受けた御守は、うぐいすを象った身体守です。
「○番の方~」という巫女さんの声に、病院の順番待ちを思い出し、絵馬の行列は避けたのでした。

  これはね、朝、すっきり起きられる御守なんだよ。

枕に敷いて寝るようにすすめてみようと思います。
                              (髙田正子)


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# by shinyurikara | 2013-01-03 17:18 | 故きを温ね  

ご近所めぐり(7)生田緑地 秋の薔薇

10月24日(水)。
生田緑地では秋の「ばら苑」が公開中です。

日向はぽかぽか。
陰は昨日の雨の気配が残っているのでしょうか。ひんやりしています。
そういえば五月に来たときも雨上がりでした。
雨粒が微塵となって、薔薇の香とともに天へ還っていくような日でした。

今日も眩しいです。

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  冬に入る前の一日きらきらす   正子

秋の薔薇は、五月の薔薇とどこが違うのでしょう。

ひょろりと丈が高い、花も葉も少ない、などなど。
これまで雰囲気では捉えてきましたが、
結局のところ、秋なのだから元気が無くて当然だろう、という気持ちがどこかにあるからでしょう、
正面から向き合ってはいなかったように思います。

咲いている薔薇、咲こうとしている薔薇があります。
一方で、もう咲く気の無さそうな薔薇があります。
花の大きさは、季節もさることながら、種類や栄養のよしあしで変わってきそうです。

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  大輪の薔薇秋冷の襞深く   正子

でも今日、気づいてしまいました。
五月の薔薇と違うところ。

それは――香り方と散り方。

 秋の薔薇ゆふべの雨の匂ふのみ   正子

一輪一輪に香りはあります。
が、苑全体を包み込んで立ち上る香りはありません。
こんなによい天気なのに。

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そして五月の苑を歩いた日は、薔薇の崩れる音に、いくたびもはっと立ち止まったものでした。
今日は……静かです。
笑いさざめいて人々は行き交っているのですけれども。

  一茎の先端に朽ち秋の薔薇       正子
  朽ちながらつぎつぎ咲いて秋の薔薇

秋の薔薇は花期を終えてもそのままそこにあるのでした。

散る力、ということをふと思いました。
五月の薔薇の威勢のよい散り様は、薔薇の力にほかならなかったのではないしょうか。
秋の薔薇は、咲くためだけに力を使い切ってしまったのだと思いました。

  遊園地たりし日溜り秋の薔薇   正子

                                           (髙田正子)



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# by shinyurikara | 2012-11-26 15:45 | ご近所めぐり  

故きを温ね(12)亀岡八幡

10月18日(木)、朝までの雨は出かけるころにはあがりました。
でもまだ限りなくあやしい空模様なので、
携帯用ではなく、さっとさせる長い傘を持っていくことにしました。

日傘もそうですが、畳んであると、ちょっとだからまあいいか、とすぐに横着をする私です。
すっかり色黒になってしまったのは、そのせいかどのせいか……。

待ち合わせの市ヶ谷駅には、遅くもなく、早過ぎもせず到着。
既にお一人お待ちです。

今日の目的地亀岡八幡は、駅を西側に出て北へ。神田川を渡ってすぐのところです。
ここは、今年22周年となった藍生が、なんと1周年を迎えたころに、連衆が寄った場所のようです。
『廣重江戸名所吟行』(小学館)の該当ページに、

  郁子あをき一周年を禱りけり  杏子

という主宰の1句を見つけました。
「初々しいころ」と言ったら、「いや、猛々しいだろ」とどなたかが。
当時の私は大阪暮らし。
今では21歳になってしまった長女も、まだふにゃふにゃしていました。
猛々しい(?)ご一行とは縁無く過ごした日々でした。

急坂を上がらねば御利益は期待できないものなのか、ここの八幡さまの階段も短いながらなかなかです。
途中左手に小さなお稲荷さま。「茶の木稲荷」とは佳き名前です。

  茶の咲いて茶の木稲荷に続く坂   正子

八幡さまには狛犬さんが2対いました。最初に出迎えてくれたのがこちら。

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さっきまで帽子を被っていたようだ、とか、赤塚不二夫のキャラみたいだ、とかみんな好き放題に。
ふと足元を見ると、桜紅葉の落葉。

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仰ぐと他はまだ青々しているのですが、やはり秋も終わりにさしかかっているのです。
ご本殿の前には、一叢薄。

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  金色の雨あがりたり薄の穂   正子

20年前のご一行は、御濠端を四谷のほうへ吟行して行ったようですが、私たちはずっとここで、湧いて出る蚊を払って過ごしました。
温暖化時代の秋の蚊は、それこそ猛々しいのですが、さすがに晩秋ともなると魂が抜けかかっています。

  刺されたり影のやうなる秋の蚊に   正子

でも油断は禁物なのでした。

句会を終えると、もう暗くなりかけていました。
今年のカレンダーもあと2枚半。来年藍生は23周年を迎えます。

  星飛んで一周年を禱りしと   正子


                                        (髙田正子)


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# by shinyurikara | 2012-10-19 15:04 | 故きを温ね  

てくてく武蔵野(4)大利根

9月21日(金)、神奈川に住む者としては、果てしなく遠くまで行くことになりました。
利根川の堤に突き当たるまで北上するのです。利根川を超えると群馬県。上州です。

などと言っても今では湘南新宿ラインという便利な路線もあり、快速ならば久喜まで新宿からたったの5駅目、
およそ50分です。

赤羽を過ぎ、大宮を越えると車両は貸し切りに近くなりました。窓の外は刈り入れを待つ稲田です。
北上するにつれ、窓の外が広くなっていきます。

  稔田を行くころ列車空きにけり   正子

久喜で東武伊勢崎線に乗換えて20分。5駅目の羽生が今日の集合場所です。
幹事のHEROさんは先に到着してタクシーを手配してくださっていました。

いつも手厚く準備してくださるHEROさんですが、今回は殊にめざましい活躍ぶりでした。

昭和6年9月9日、武蔵野探勝の虚子ご一行は長老「川島奇北」の屋敷を訪れています。
広大なお屋敷だったようですが、今は無く、虚子自らが書いた吟行記に「邸は埼玉県北埼玉郡須加村」「東武電車伊勢崎行きで羽生駅で降り、待合せて居てくれた自動車に分乗して向かった」とあるのを頼りに、およその場所を割り出して菩提寺を突き止め、さらに菩提寺「長光寺」のご住職を訪ねる約束までとりつけてくださったのです。

タクシーに分乗して稲田を抜け、最後の角を曲がると参道です。
真新しい大きな石灯籠がずらり。
思わず声を上げると、運転手氏が「この前の地震で全部やられたんですわ」。
辣腕の和尚さまのようです。

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山門の内側から外を見たところ。

命日が3日後の24日だという奇北の墓にも参らせていただきました。
HEROさんが手ずから育てたサルビアもお供えして。供花の写真はこちら。
→KUMIの句日記
http://blog.goo.ne.jp/hamakumi151617/e/35e6706f79ca1c47895ae63404f753b3

墓のすぐ後ろが利根川の堤です。

  大利根に秋風を聴く忌日かな   正子

上流に雨が降らず水不足を言われていますが、それでいてこの川幅です。
板東太郎の常のお貌を拝しに、出直して来なければ。

  草刈りし後きちきちのまづ戻る  正子
  さまざまに鳴き重なりて邯鄲も

帰路、駅までの道すがら、先行のタクシーが急に脇道に入っていきました。
後に続きますと、大きな空き地の傍らで停車しました。空き地には柿の一木、奥に白壁の土蔵が見えます。
ああ、ここが「奇北邸」だったところなのでした。

  すぐそこといふ秋風のかなたかな   正子

今回、HEROさんの「句集を差し上げるように」という命には、もう7年も前のだから、と言いつつ抗いきれず、
『花実』(ふらんす堂)をお持ちしました。
「ちょっと待って。ちょうど出来てきたものが」と頂戴したのがこちら。

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『随流去(ずいりゅうこ)』(MOKU出版)2012年10月刊

和尚さまの出来たての御本と物々交換と相成りました。九拝。

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# by shinyurikara | 2012-10-01 16:25 | てくてく武蔵野  

故きを温ね(11)芝愛宕山

9月10日(月)、三田線御成門改札口に11時集合のこと。
ぷらぷら歩いて、御山にのぼります、とお知らせがありました。

  連れだつて芝の愛宕へ月のころ   正子

例によって夜行性でない私たちですから、約束はもちろん昼間の11時ですけれど。

御成門の駅は初めてです。
さてどうやって行こうかしら。

私の最寄りの駅は小田急線の新百合ヶ丘です。歩くと30分かかるので大概バスに乗ります。
新宿より東へ行くときは、東急田園都市線のほうへ出ることもあります。そのときは、たまプラーザか、あざみ野か、溝の口行のバスに乗ります。
候補が多くて便利そうに見えますが、要するにどれも100㌫当てにはできないので、毎度到着希望時刻から逆算して、遅刻しない行き方を選ぶことにしています。

加えて今日は、どこかで銀行に寄る必要が生じました。
五十日(ごとおび)ではないけれど……、後でふり返ってみますと、このあたりから思考が混線したようです。
ともあれ、銀行が混み合うことなく、事故で電車が止まることなく、9時45分、御成門到着。
おお、順調順調……あれ? 
9時45分って、10時15分前じゃない!? 

直前にルート変更をしたからなのか、選んだのが30分に1本のバス路線だったからなのか、
朝の片付けの勢いのまま、1時間早いバスに飛び乗ってしまったようです。
あああ~、吟行前に珈琲タイム。贅沢な1日の始まりです。

愛宕神社に詣るには、傾斜40度の男坂を上らねばなりません。
この男坂は、曲垣平九郎が馬で駆け上がった故事にちなみ、出世の石段とも呼ばれます。
今月末に「出世の石段祭」を控え、看板もポスターも出ていましたが、その大きな文字を見て、つい、

  「世に出る」とも「世を出る」とも……

と口走った私。朝のショックは、珈琲一杯では挽回できなかったのかもしれません。

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途中で止まるのもおそろしく、一気に上がった男坂。
男坂というものがあるからには、当然女坂もありますが、

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そんなに女らしくない気がします。
こちらは裏のほうへ下る坂。

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降りてみたら、とても素敵なお店があります。
なになに、店の名に添えて、la fromagerieですって。
その一角だけが別世界のようでした。

愛宕神社は火の神を祀っています。
今では摩天楼のような周りのビルから見おろされていますが、江戸の昔はここらで一番高い場所だったことでしょう。

  水澄んで火伏の神のお膝元  正子

日差しの強さは相変わらずでしたが、日の色にたしかな秋の到来を告げられた1日でした。


                                            (髙田正子)

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# by shinyurikara | 2012-09-13 23:42 | 故きを温ね