故きを温ね(4)堀切菖蒲園

2012年6月4日(月)。
小田急線、東京メトロ千代田線、京成線を乗り継ぎ、川を幾筋も渡って堀切菖蒲園へ行って参りました。

今年の定点観測地である生田緑地にも、入口に菖蒲園があります。
季節を問わず、ここを通って奥へ行くのが常ですが、今年は花の盛りをはずしてしまいそうだと思っていました。

伊勢菖蒲、肥後菖蒲、そして堀切菖蒲が花菖蒲の3大系統と聞きます。
おお、そのような由緒正しき地を訪ねることになろうとは。
しかも、ちょうど最初の花が咲き揃ったところのようでした。
朽ちた花は1つも無く、花の下には明日にも咲きそうな莟が整い、輝いておりました。

  次の花尖らせてゐる菖蒲かな   正子

入口すぐの一画には「一番田」と立札がありました。
私は途中で数が分からなくなりましたが、十三まで数えた人も。

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花菖蒲には、1株1株に素敵な名がつけられています。
これは「江戸紫」。

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「鶴の毛衣」というのには、少し首をかしげましたが、こうして後で見てみますと、なるほど毛衣です。

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「愛知の輝」という株も。
葉も少し黄が勝っています。
名古屋城の金のしゃちほことイメージを重ねましたが、名付け親の心はいかに。

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菖蒲園をめぐる水路には、萍がびっしり。

ふと不思議な生物の不思議なしぐさに気づき、よくよく見ますと、亀でした。
亀が直立して、前足で宙をかいているのです。
頭にも甲羅にも萍がついて、迷彩模様のようになっているので、とっさに何者かわからなかったのでした。

見とれているうちに、亀は再び水へ。
なぜ撮っておかなかったのでしょう・・・!?
それより先は、亀が気になって気になって、ずっと水路ばかり見て歩きました。

最後にやっと撮れた1枚。

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  覗き見るなら萍の合間より  正子

今日、私は何を見に行ったのでしたかしらね。         (髙田正子)

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# by shinyurikara | 2012-06-06 12:11 | 故きを温ね  

ご近所めぐり(5)生田緑地ばら苑

2012年5月23日(水)。

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今日はすばらしくいい天気。昨日の大雨が嘘のようです。

薔薇に宿るあまたの雫だけが昨日の雨の証。
むんむんと苑を覆っているのは、天へ帰っていく雨粒の残り香なのかもしれません。

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なあんて、薔薇にむかうとどうもキザになってしまって、むずむずしてしまいます。

薔薇の句は難しいと皆が言います。
おそらく平常心で詠むことができなくなるからでしょう。
薔薇には平常心でいてはいけない気分にさせられるところがあります。

今年は生田緑地で定点観測をする年です。
春先の梅に始まり、毎月1度ずつ通ってきています。

1月に来たときは、雪のあとでした。
木の階段を滑らないように梅林へのぼり、息を整えていましたら、
人影がひとり、ふたりと……。

  探梅の三人なれば華やぎぬ      正子

2月は立春のすぐあとに。
藤子不二雄ミュージアムが完成したからでしょう。
界隈を走るバスには、おばけのQ太郎やドラえもんでおなじみのキャラクターたちがプリントされていて楽しげです。
内装はどうなっているのかしら。一度確かめてみなくては。

  早春やバスにQちやんドラえもん    正子

3月は、思わぬお客様を迎えました。
前日、俳人協会のパーティーでお目にかかった、わがふるさとの先輩です。
お泊まりだとおっしゃるので、句会にお誘いしてみました。

  あたたかに大テーブルを囲みあふ   正子

4月は春の嵐の翌日でした。

  さえざえと嵐のあとの桜かな       正子

長らく工事が続き、園内至る所が掘り返されていましたが、
そろそろ完成形が見えてきていました。
ベンチやトイレが整備され、賑わいが戻っていましたが、なじんだ噴水は、もうありません。

  改修の成りてなづなの花盛り       正子

そして5月。
薔薇は、「ばら苑」の開苑期間に合わせて見に来ます。

「生田緑地ばら苑」は、閉園となった向ヶ丘遊園内にあったものです。
開苑当時(1958年)は東洋一と賞されたのだとか。
その立地から「秘密の花園」として親しまれている云々と、パンフレットにあります。

今は川崎市が引き継ぎ、ボランティアに支えられて育まれています。
ここへ来るたび、手入れをしたり、記録をとったりしている方々の姿が気になっていましたが、

  薔薇守の証の腰の鋏かな         正子

やっと詠めました。敬意を籠めて。

1年おきとはいえ、同じ時期に同じ場所で同じ種の花と向き合います。
ですが、思うこと、感じることは毎回異なります。

当然ですね。花も、人も、違うのですから。
                                    (髙田正子)


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# by shinyurikara | 2012-05-28 18:19 | ご近所めぐり  

故きを温ね(3)本郷

2012年5月19日(土)、本郷三丁目の駅は久しぶりです。
かつて通学に使っていたというより、
4年前、「俳句」誌の鼎談の仕事で、毎月1回、降り立った駅です。

今日は午後、春日のシビックホールに用があって出て来たのですが、
折角だからちょっと足をのばして東大に寄り、青邨先生の句碑を拝もう、
そのあと坂をどれか選んでたらたら下り、春日界隈もうろついてみよう、
という腹づもりです。
春日には、社会人になってから、ほんの少しの間住んだことがあるのです。

実は心の中には、句碑と静かに対峙する図ができていました。
ところが、あろうことか、今日は東大の五月祭初日だったのです。
雑踏をかき分けて奥まで行くのね・・・呼び込みの子どもたち(大学生のことです、もちろん)と目を合わさないようにしないとね・・・それにしても模擬店だらけだねえ・・・あ、蝶!

  雑踏の学園祭を揚羽蝶      正子
  三四郎池の湛ふる青葉闇

青邨句碑は、山上会館という会合とそれに伴う宿泊のための豪壮な建造物の庭にあります。
ここには昔、山上会議所と呼ばれる公民館風の施設があり、
毎月青邨を主宰と仰ぐ「東大ホトトギス句会」が開かれていました。

  銀杏散るまつたゞ中に法科あり  山口青邨

という青邨句碑の隣に、今はもう1つ句碑があります。

  銀杏散る万巻の書の頁より    有馬朗人

触れると、びりっときそうですが、池に抜ける道のべの植え込みはつはつに立っているので、道祖神のようにも見える2つの句碑でした。

春日へは菊坂を辿ることにしました。
下り方としてはもっとも効率が悪い、つまりそれだけ遠回りして下りていくことになります。

宮澤賢治や樋口一葉が一時住んだ所として有名な坂です。
途中から、下道と呼ばれる細い道が派生します。
家1軒分くらいのはばで段差のある2本の道が並行している具合で、
ところどころに設けられた石段で、上り下りできるようになっています。

  下道も上なる道も風薫る   正子

一葉の井戸が残っているのは下道のほう。
道を挟んで敷地いっぱいに家が建ち並び、閉ざされた窓のすぐ内側に人の気配がある住宅街ゆえ、案内板があるどころか、むしろ侵入者として、息をひそめて通らねば失礼にあたりそうです。

  菊坂をすこし迷へる薄暑かな  正子

  
今日の終点は源覚寺の閻魔堂です。
こんにゃくえんまの通称通り、お堂にはこんにゃくが山と積まれています。

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わが家の、いまだ受験生になる覚悟のできていない高校3年生のことをお願いしてしまいましたが、さて御利益はあるでしょうか!?

  閻魔堂まで汗拭いて坂下る  正子

かつて住んだマンションは、そのままの姿で健在でした。
夜遅くに帰るだけの場所でしたので、シャッターの下りた人声の無い通りしか記憶にありませんが、コンビニやコーヒーショップ、遅くまでやっていそうなレストランも出来ていて、今なら夜中も賑やかなことでしょう。

近くの公園の入口に銅像発見。

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春日局ですって。
だから「春日」か・・・と、そんなことも知らずに住んだ街でした。      


                              (髙田正子)
 
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# by shinyurikara | 2012-05-21 01:25 | 故きを温ね  

故きを温ね(2)亀戸天神

2012年5月1日、はじめて亀戸天神の駅に降り立ちました。

このところ、藤棚を見かけるたび、花の具合が気になって仕方がない、という日々を過ごしてきました。
それはMayさんが、今日の藤吟行を企画してくださっていたからにほかなりませんが、
もう1つ理由があります。

隔年で定点観測吟行を行っている座間の公園近くに、立派な藤棚があります。
これだけ長く通っていながら、その花の盛りに一度もまみえたことがありません。
花も縁のモノなのです。
そう思うにつけ、ますます天神さまの藤の花が気にかかってくるのでした。

今年はすべての花が例年より遅めです。
藤の花も例外ではないようですが、かと思うと、白藤にはすでに錆が入っていたりもします。

藤より、境内を埋め尽くす人や、池で羽づくろいをする青鷺、山盛りと言うほかはない大小の亀に、まず目を奪われた私でした。

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まんまん中に青鷺がいる写真を撮ったつもり……。

また、境内の梅の木は、かつて太宰府から移植したという由緒正しきものだそうですが、
どの木も小さな実を結び始めていたのが印象的でした。

  飛梅や江東に実を結びつつ  正子

朝の土砂降りにもかかわらず、初めのうちは日差しにも恵まれた境内でしたが、
昼近く、一天にわかにかき曇り、二度目の土砂降りに見舞われました。

  あかんぼを包んで走る藤の雨  正子
  雨宿りして人親し藤の下

傘が用をなさぬほどの降りようでしたが、濡れたことで、やっと覚醒した感もあります。

吟行ではまず、その日その場所での一期一会をそのまま描写することを試みますが、
「たまたまそうだった」というだけでは物足りないこともあります。
「今」「ここで」詠むのですが、
触発されてどこまで飛べるかということも、吟行の醍醐味の1つに違いありません。

  風越えてゆく藤房をひとつづつ  正子
  水明り届く限りを藤揺るる

                                           (髙田正子)
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# by shinyurikara | 2012-05-07 00:13 | 故きを温ね  

てくてく武蔵野(1)下高井戸~玉川上水跡

このブログは本来、鎌倉あるきに励むために起ち上げたのでしたが、
なんとまあ、また新しい試みが加わってしまいました。
脚は2本しかないのに、どうしましょう。

新しい試みでは、武蔵野を歩き回っていきます。
第1回は4月29日(日)京王線下高井戸駅で下車し、あたりを歩きました。

なぜ29日だったのか、なぜ下高井戸なのか、そもそもなぜこの企画が始まったのか、
などなど、詳しい記録は、私たちのホームページにHeroさんがアップしてくださっています。
→ 新百合AOI倶楽部電子版 http://park19.wakwak.com/~haiku575/

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ここはかつて、玉川上水が滔々と流れていたところ。
今では暗渠となって地をくぐり、地上は公園になっています。

ちょうど八重桜が落花盛んなころあいでした。
流れは姿を消してしまいましたが、どの花も、かつての流れに向かって枝をさしのべているような姿をしています。

  花の枝地中の水を聴くやうに    正子
  地をくぐるかつて落花をうけし水 

今日の句には、暗渠という言葉を使うか使わないか、迷っています。
暗渠と言ってしまえば、明白なのですが。

  地をくぐる水をおもへる遅日かな   正子  

今年は「花を待つ」時間も堪能しましたし、
目黒川では開き行く桜を、鎌倉では山桜を、御嶽行きでは巻戻っていく桜を味わいました。
そして、仕上げは今日の八重桜の飛花落花……贅沢な春でした。

   
                                               (髙田正子)


        
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# by shinyurikara | 2012-04-30 22:03 | てくてく武蔵野