ご近所めぐり(4)オオカミをさがして〈その2〉

4月18日水曜日。晴!
今日の好天をずっと祈っていました。

3月に計画した御嶽山吟行が流れ、それでもそのままにしなかった私たちは、
再トライをひと月後の18日に定めました。
その間護符を貼ったお宅を覗きにうろついたりもして「学習」し、
あとは天気を祈るだけとなっていたのです。

週間天気予報がこれほど気になったのは、修学旅行以来!? 
とまでは大げさな言いようですが、こういうわくわく感は、ことに主婦やリタイア組にとって、
自ら求めなければ絶対に得られないものではないでしょうか。
求めなくても生きていくのに差し障りはありませんから、つい他の用事を優先させたりもしています。

もちろん、何をすればわくわくするかは人によりますが、
我ら俳句詠みは、日常から一歩はずれて俳句を詠む機会があれば事足りるという、
非常に経済的な種族なのです。

当日の詳細はグループのHPで→http://park19.wakwak.com/~haiku575/

下界では散り尽くした風情の桜が、御嶽に近づくにつれ、今を盛りに巻き戻っていきます。

  駅ごとの遅き桜をなつかしみ  正子

  花の下にて単線の時刻待ち

そして山上には、なんとまだ蕾すら整っていない裸木の桜が。

ケーブルの山上駅から御嶽神社へは一本道ですが、山中を縫って進みます。
途中桜ばかりの一角があり、枝先がそろってほの赤くなっているのが、印象的でした。
明日にも花芽が噴き出し始めるのでしょう。不思議な明るさに満ちていました。

  枝先のやつと明るむさくらかな  正子

  
山上に祀られる大口真神には、阿吽の狛犬さんならぬオオカミさんたちが侍っています。
畏れ多くもその美形に、もたもたと携帯を向ける私でした。           (髙田正子)

e0268291_14323048.jpg
e0268291_14315620.jpg
 


                                              
[PR]

# by shinyurikara | 2012-04-22 14:36 | ご近所めぐり  

鎌倉あるき(2)実朝の山桜

e0268291_1643357.jpg


2012年4月13日、北鎌倉六国見山(ろっこくけんざん)頂上の山桜。

麓の住宅街から、急な石段をのぼり、さらに坂道をのぼり継ぐと、小さな展望台に出ます。
その最後の数段をのぼりきると、真正面に、この花の頂きがありました。

よいしょ、こらしょ、どっこら……わあ!

と、こんな間合いです。

六国見山は山桜の山ですが、花を見ながら、というより、大樹の幹を見ながらのぼってきていますから、いきなり花の頂きと真向かうことになって、息を呑みました。

展望台から南を見ると、向かいにも花の山。
左手にすこし霞んで光っているのは由比ヶ浜のあたりです(全然それらしく写っていませんが、そうなのです)。

e0268291_16441812.jpg


鎌倉の山桜は、吉野の花を愛でた実朝が移植させたものの末裔と、同行のJuneさんが言っています。
若くして散った実朝ですが、その子孫がこんな形で遺っているのだと思いました。

  実朝のさくらの裔の盛りなり  正子

  実朝の花のふぶける潮かな

e0268291_16453094.jpg


反対側は横浜方面。ベイブリッジが見える……らしいです。

六国見山とは、文字通り六つの国を見られる山の意だそうですが、
「けんざん」の音が、何とはなしに面白いです。

六国は、ここ相模とお隣の武蔵、伊豆、駿河、海を隔てた安房、上総でしょうか。
展望台から海に向かって右手には、首まで霞に浸かった富士山が、
頂きのみを見せていました。

  花びらを六つの国に飛ばすとや  正子

山を下りて仰ぐと、頂上の展望台のあたりは、富士山よりも白いほど。
つい先ほどまで、まさに山桜又山桜の中にいた私たちだったのでした。

                                         (髙田正子)


 
                    ♪
                    ♪
[PR]

# by shinyurikara | 2012-04-15 16:52 | 鎌倉あるき  

ご近所めぐり(3)オオカミをさがして〈その1〉

4月14日土曜日。花の雨。

「ご近所に御嶽山のオオカミの護符を貼っているお宅があるんですよ。
見に行きませんか?」
とHeroさんからお誘いがありました。

待ち合わせは、小田急多摩センターの駅でした。
ですがどういうわけか、終点の唐木田まで行ってしまった私。

改札を出て、すっこーんと明るい空を見あげ、
  約束の時刻前とはいえ、誰も来ていないなんてへんよ
と思うのと同時に、
  あああ、どうして私は唐木田にいるの!!!?
慌てて一駅とって返したのでした。

いきなり何をしているのかしら。
幸いすぐ出る電車に飛び乗ることができました。
改札を出てしまったのが、返す返すも悔やまれます。

  終点の明るき雨の花を見に    正子

私たちのグループでは、3月に御嶽山吟行を計画していました。
たまたま と ふと が重なり、瓢箪から駒のように出来た計画でしたが、
山上は雪が降るような天候のまま。
「参道の雪かきは済ませたけれどねえ」と言われるに及んで、
仕切り直すことにしたのでした。

  詳細はグループのHPに近日UP→http://park19.wakwak.com/~haiku575/

そんなある日、パルテノン多摩(多摩市落合)へ出かけたHeroさんは、
歴史ミュージアムの特別展で、山王下講中による御嶽山代参の映像を目にされました。
代参講というのは、講の代表者が寺社に参詣し、護符を受けることです。
伊勢講、熊野講などと聞くと江戸の匂いがしますが、
戦前までは日常的に行われていたようです。
このあたりには、御嶽講のほか、大山講もあった模様。

ですが、特別展の映像は昭和のものではありません。
撮影日は、つい去年の秋に、代参が現実に行われたことを告げていました。

e0268291_143746100.jpg


山王下というのは、駅を挟んで反対側の地名です。
その足で見に行かれたHeroさんは、
何軒かの玄関脇に、たしかに護符が掲げられているのを、しかと目に焼き付けられたのでした。

  
川沿いに雨の花吹雪の中を歩き、幹線道路を渡ったところに、その家々はありました。
代々この地に暮らしてこられた佇まいの家屋に狼が一匹ずつ、
いえ、表に三匹、勝手口にも三匹、坐す家もありました。

  花濡れて冷ゆ狼の護符もまた    正子

古民家に貼られたまま遺っているのではなく、現代の空気を吸って生きている護符。
降りつのる花の雨に濡れながら、立ち去りかねる思いの私たちでした。

  花冷や傘傾けてから畳み    正子


                                          (髙田正子)

                        ♪
                        ♪
[PR]

# by shinyurikara | 2012-04-15 00:33 | ご近所めぐり  

故きを温ね(1)市川真間

e0268291_15541376.jpg


2012年4月8日、まさをなる空より枝垂れている桜。
花盛りの伏姫桜に、ついにまみえることができました。

まだ見たことがない、という私の愚図愚図したエッセイを読んで、
Mayさんが「今年どうかな?」と企画してくださったのでした。
  愚図愚図はこちら → http://park19.wakwak.com/~haiku575/
                 「耳澄ま」アーカイブ2008年4月の項へ               

寒さで、草木の生育がひと月遅れの今年、桜も予想が難しく、
ならばどちらかには当たるように、と、花祭の日に予定を組みました。

8日は日曜日。
家の用事最優先で、これまでは出ないようにしてきた曜日です。
ですが、ふと見回してみると、子どもたちはそれぞれの用で朝から出かけ、残るは夫のみ。
しかも夫も、その日は午後から出かける用があるというのです。

そんなわけで、めでたく真向かった伏姫桜。
「樹齢四百年」の札は、30年前、初めて来たときと同じようです。
ということは少なく見積もっても430年……、途方もない日月です。

e0268291_15561455.jpg


びっしり花をつけている巨大な老桜と向き合っているうちに、すこしさびしくなりました。

立派に咲いているのです。
ですが、しずかすぎるのです。
ふと、岐阜県根尾の薄墨桜を思い出しました。

  縹いろうすずみいろに桜老ゆ  正子

富安風生の「しだれざくら」の名句は、昭和の初期に詠まれたものです。

     真間、伏姫桜
  まさをなる空よりしだれざくらかな  風生『松籟』昭和15年刊

今より百歳若かった桜がどんな風情であったかは知りませんが、
風生の句は、花の精気を讃えたものだったように、思えてきました。

  湧きいづる花を讃ふる句なりけり  正子

美しさにもいろいろありますが、俳句は時分の花を詠むだけのものではありません。
老桜の見せてくれた花を、しかと心にたたみたいと思います。

今日の私は、おそらく自らの加齢が条件に加わってのことでしょう、
いささかへそ曲がりな感慨にひたってしまいました。

                                     (髙田正子)
[PR]

# by shinyurikara | 2012-04-09 16:01 | 故きを温ね  

ご近所めぐり(2)ちょっと足をのばして

e0268291_20223532.jpg

目黒川の桜。

どこが「ご近所」だ!?
小田急線とは縁もゆかりもないところではないか、と言われてしまいそう。
その理由は最後に。

4月5日、池尻大橋から中目黒を経て、目黒駅まで延々一万歩以上、川沿いの桜並木を歩きました。

池尻大橋をスタートしたのが11時。
途中でお昼をとって、オープンしたての美術館に寄り、目黒まで歩く計画です。

うかうか歩いていたのですが、
「さっそくブログに書く?」と、同行のMayさんに聞かれ、
おお、すっかり忘れておった、ならば写真の1枚なりとも、と、慣れぬ手つきで携帯を操ったのでした。

先週の土曜日は、なかなかの強風。
週が明けて火曜日は、なんと春の嵐。
翌水曜日は、一転快晴、なれど風強し。
そして木曜日の今日もまた。 桜祭の提灯が、風でこんがらかりそうです。

これだけ風の日々が続いたのに、つぼみの桜とは、実に強靱。
今日のあたたかな日差しに、目に見えてほころんでゆきます。

立ち寄ったビストロではお喋りをしすぎたようです。
午後ふたたび花人の流れに加わったときには、すでに満開の風情すら。

  花人の眩しさうなる顔ばかり      正子

 
中目黒を境に、目黒川は随分と表情を変えます。
昔、舟が着いたという場所は、工事中で覆われていましたが、
別の川と合流しているのでしょうか、そこから急に川幅が広くなり、流れもゆるやかになります。

そのあたりにほんの少し、提灯のとぎれる場所がありました。
人も少なく、心なしか花が静かに仰がせてくれる風情でした。

目黒駅近くの雅叙園に落ち着いたころには、皆、脚がまさに棒。

お喋りばかりで句帳を取り出すこともなかったのですが、ここでやはり句会をしておこうということに。
半分眠りそうになりながら(いえ、ほんとうに意識の飛んだ数秒から数分がありました)、むりやり5句。

夕刻、目黒駅へ向かう坂の桜は、やはり風に巻かれつつ、満開となっていました。

  打ち合ひて風のさくらとなりにけり   正子

目黒駅は、私が学生のころ、2年間通学に使っていた駅です。
すでに30年以上昔のことゆえ、面影を探すほうが大変なほど、駅界隈は変わっていました。
それでもときどき「遺物」を発見することもあって。

  さまざまのこと思ひ出す桜かな  芭蕉

電車に乗り込みながら、そんなことを思ったことから、いきなりの定義破りに及んだ次第です。

                                                (髙田正子)


                         ♪
                         ♪
[PR]

# by shinyurikara | 2012-04-07 20:44 | ご近所めぐり