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故きを温ね(21)木場

樹氷、ではありません。

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氷柱のようです。

2014年初吟行で、木場公園へやってきました。
1月20日(月)大寒。
年が改まってすでに半月以上の、スローなスタートです。
思いの外ぬくい、と思いながら歩いていましたが、思いがけないところに初氷柱発見。

通りがかりの人が、

  いつもこの木だけにできるんですよ。
  去年の雪の日なんて、すごく綺麗でしたよ。

と教えてくれました。

  ことごとく氷柱となつて滴りぬ  正子

耳を澄ましていると、かそけき音がしています。少し風があるのかもしれません。
あ、鵯!
何をしにきたのでしょう。
ああ、がさがさしないで。
ほら、いっせいに氷柱が降ってきました……。

木場はその名の通り、かつては木材を扱う町でした。
現在その役割は新木場に移り、貯木場であったところにこの公園ができたというわけです。

広い広い公園です。
聞けば、地下は大江戸線の車庫になっているのだとか。

アップダウンの激しい土地に住み、
目の端には必ず丘や山が入り込んでいる日常を送る私にとって、
このひたすら平らな感じは何か不安ですらあります。
平らな地面にお椀のようにかぶさった空も、一度にどさーっと崩れて来そう……、
なんて杞憂を抱いていたわけではありません。
が、心のどこかにそんな砕片を抱いていたのかなあ、と思わないでもありません。

  大寒のなほ定まらぬ空模様   正子

公園のまん中あたりを東西に貫く仙台堀川、
東側に沿って南北に流れ、その先で西に大きく曲がる大横川は運河です。
今は材木を浮かべることもなく、昏い、けれども思っていた以上に透き通った水を湛えています。

すでに昼近く。
雲が増えたり減ったりしていた空は、すっかり青空となり、日が濃くなってきました。
さざ波すら立たない水面を見つめていると、
なにか一辺の極度に長い直方体、たとえば羊羹のようなものと向き合っている気がしてきます。

鴨が一羽、長い水尾を引いて音も無く滑っていきました。

  大寒の水の押し合ふ運河かな  正子

                              (高田正子)

                ♪
                ♪

  

  

by shinyurikara | 2014-01-22 22:16 | 故きを温ね  

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